第1章 はじめに
1.1 本書の目的
「ODS 事業者向け参入ガイドブック(開発事業者向け)(本書)」は、ソフトウェアやデータ関連サービスを提供する事業者が、データスペース事業への参入を検討する際に、参入の是非、自社が担い得る役割、初期投資の置き方を判断するための視点を整理することを目的とする。
本書は、個別仕様や実装手順を解説する技術書や手順書ではなく、参入判断に必要な概念理解と検討視点を提供することに主眼を置く。これらは、実際の参照実装OSSを用いて標準仕様でできることを確認しながら理解することが重要であり、構築運用ガイドブックにおいて具体例とともに扱うことを想定している。従って、本書は、その前段階として、Open Dataspacesの全体像を開発事業者の視点で理解し、どこに事業機会があり、どこから先は実装ガイドや参照実装で確認すべきかを切り分けることを目的としている。
1.2 想定読者
本書でいう「開発事業者」とは、データマネジメントやAIに関わる技術企業を幅広く含む主体である:
AIやBI(ビジネスインテリジェンス)、DI(意思決定インテリジェンス)等のホリゾンタルアプリケーションや業界特化のバーティカルアプリケーションを提供する事業者
データマネジメントやAPI管理、認証・認可等のミドルウェアのマネージドサービスを提供する事業者
サービスの提供プロセスをソフトウェアとして実装し提供する事業者(Service as Software)
事業会社における新規事業責任者や技術企画担当
1.3 本書の範囲
本書では、開発事業者がデータスペース事業への参入可否を判断するために必要な内容に焦点を当てる。判断に直接関係しない詳細な専門領域については扱わない。
In Scope
Open Dataspacesの基本概念
開発事業者の立場から想定される参入の軸と検討ポイント
小さく始めるための実務的な観点
Out of Scope
設計思想やアーキテクチャパラダイムの解説
特定製品・特定ベンダーが提供するサービスに関する対応や実務
法制度に関する対応や、法務やガバナンスに関する実務
ドメイン・業界別のユースケースの要件や分析、戦略
OSS(オープンソースソフトウェア)の導入手順、SDK(ソフトウェア開発キット)の利用方法
参照先
参照すべき関連ドキュメントは表1のとおりである。
表 1 参照先
Why Open Dataspaces: 設計思想とアーキテクチャパラダイム. (以下、「Design Philosophy」)
組織・企業・国境を横断した新たな分散データマネジメントの技術パラダイムであるODSの設計思想/アーキテクチャパラダイムの解説文書
Open Data Spacesリファレンスアーキテクチャモデル(以下、「ODS-RAM」)
企業・業界・国境を横断した分散データマネジメントのためのリファレンスアーキテクチャ。技術パラダイムや階層構造モデル、プロトコルの関係性などにより構成される参照文書
ODS Protocols (以下、「ODP」)
ODS-RAMをもとに分散データマネジメントを実現する機能を提供し、Open Dataspacesの相互運用性を担保する一連の技術的な取り決め
ODS 事業者向け参入ガイドブック(ユーザー事業者向け)
データマネジメントやAIサービスを利用または自社で実装する立場にある企業や行政機関等の実務者・経営企画担当者が、データスペース事業への参入を検討する際に、参入の是非・自社が担い得る役割・初期投資の置き方を判断するための視点を整理
ODS 技術者向け導入ガイドブック
ODSを採用・導入またはサービス提供する立場にある技術者を対象に、その技術的な全体像と基礎を理解し、設計・実装・運用に着手する
1.4 本書の全体構成
本書は、開発事業者がデータスペース事業への参入を検討するために必要な理解を、段階的に深められるよう構成している。各章で下記の内容を取り上げているので、読み進めて頂きたい。
第2章:産業構造の変化とOpen Dataspacesが求められる背景
第3章:Open Dataspacesの概念と構造、従来方式との違い
第4章:Open Dataspacesへの関わり方と開発事業者の検討ポイント
第5章:参入判断の進め方と小さく始めるための考え方
第6章:標準化・相互運用性と技術的な準備の観点
第7章:検討・実証・展開の各段階でのタスクと留意点
第8章:本書のまとめと開発事業者へのメッセージ
最終更新